化学療法の種類
当院で主に施行している、術前術後の抗がん剤治療について、説明します。基本的にすべて点滴、外来通院で行います。

〇EC DTX:
3週間に一回の点滴です。EC療法を4回、その後DTX療法を4回施行いたします。
〇TC:
3週間に一回の点滴です。TC療法を4回施行いたします。
〇EC DTX HER(またはEC DOC HER PER):
3週間に一回の点滴です。EC療法を4回、その後DTX療法を4回施行いたします。後半の4回にハーセプチン(HER)、またはハーセプチン+パージェタ(HER+PER)という分子標的治療薬を上乗せします。抗がん剤治療が終了した後は、HER治療のみを14回施行します。
〇dose dense EC PTX:
2週間に一回の点滴を前半4回(EC),後半4回(PTX)施行いたします。2週間毎の抗がん剤投与には、PEG-GCSFという白血球を増やすお薬を併用する必要があり、抗がん剤点滴後2-5日目に注射をするため来院の必要があります。
がんのタイプにより、治療法が異なりますので、詳細は医師にお尋ねください。
共通した副作用は、嘔気、便秘、脱毛、などですが、薬剤により副作用も異なります。詳細は 化学療法副作用対策にお示しいたします。
〇ペンブロリズマブ(キートルーダ):
免疫チェックポイント阻害剤というカテゴリーのお薬です。
細かくは、PD-1という腫瘍免疫回避に関連した分子に対する抗体薬です。
術前と術後に使用し、抗がん剤と併用することで、再発率(正確にはイベント発生)の低下が示されています。
免疫関連有害事象という、免疫療法特異的な副作用がみられる可能性があります。
適応:再発高リスクのトリプルネガティブ乳がん
Pembro : Pembrolizumab(免疫チェックポイント阻害薬)
PTX : paclitaxel
Carbo : Carboplatin
EC: Epirubicin+Cyclophosphamide
〇カペシタビン(ゼローダ):
術前治療で完全消失が得られなかった場合の術後治療に用いられます。(non-HER2タイプ)
内服の抗がん剤です。2週内服1週休薬の3週間を1サイクルとして 6~8サイクル施行します。
主な副作用は、消化器症状や色素沈着、手足症候群(手足の皮がむける)などです。
〇T-DM1(カドサイラ):
術前治療で完全消失が得られなかった場合の術後治療に用いられます。(HER2タイプ)
3週間に一回の点滴治療です。14回施行します。
主な副作用は、血小板減少などです。
〇アベマシクリブ(ベージニオ):
CDK4/6という細胞周期に関連した分子に対する抗体で、がんの増殖を抑える内服薬です。
ホルモン治療と併用し、術後2年間内服することで、再発率の低下が示されています。
下痢、倦怠感、間質性肺炎などの本薬剤特異的な副作用がみられる可能性があります。
適応:高再発リスクのホルモンレセプター陽性、HER2陰性の乳がん
〇TS-1:
内服の抗がん剤です。
ホルモン治療と併用し、術後1年間の内服で、再発率の低下が示されています。
一日2回、14日内服後7日休薬という21日サイクルを繰り返します。
手足症候群、消化器症状、倦怠感など、抗がん剤による副作用がみられます。
適応:中~高再発リスクのホルモンレセプター陽性、HER2陰性の乳がん
〇リムパーザ(オラパリブ):
PARP阻害剤という分子標的薬です。
BRCA1/2の遺伝子変異があるトリプルネガティブ乳がんで、術前治療で完全消失が得られなかった場合の術後の治療薬として用いられます。
一日一回の内服を一年間内服の治療薬で、主な副作用は、倦怠感、悪心、嘔吐、貧血などです。