
乳房再建とは、乳房切除により失った乳房を再び作ることを言います。
人工物(シリコン)を使用する方法と、自分の体の一部を使い再建(自家移植)する方法があります。自家移植には、広背筋皮弁と遊離腹部皮弁という方法があり、それぞれ利点と欠点があります。
取り除いた乳腺の代わりに、別のものを入れて乳房を作りますが、乳房内に入れるものにより以下の方法があります。

①エキスパンダー・インプラント法
シリコンインプラントで乳房を作成する方法です。乳がん手術時にエキスパンダーといわれる風船を乳房内に挿入します。エキスパンダー挿入は1時間程度の手術です。3~6か月で風船を膨らまし、インプラントを入れる場所を確保します。その後、エキスパンダーをインプラントに入れ替える手術をします。インプラントは人工物なため、破損などのリスクがあります。そのため、定期的なメンテナンスと破損時に入れ替えが必要になります。
②広背筋皮弁法(LD)
広背筋という背中の筋肉とその表面の脂肪、皮膚を再建臓器として使用します。遊離腹部皮弁と異なり煩雑な血管吻合を伴わないため、手術は4時間程度で終わります。人工物と異なり定期的なメンテナンスが不要な一方、背中に傷ができるデメリットがあります。また、背中の筋肉を使用するため、アスリートには向いていません。
③遊離腹部皮弁法(DIEP)
腹部の脂肪と皮膚を使用した再建方法です。腹部の脂肪の血管をつけた状態で切除し、その血管を乳房近傍の血管とつなぎます。手術操作が煩雑なため、手術には10時間程度を要します。下垂のある大きな乳房も作ることが可能である利点がある一方、腹部に傷ができるデメリットがあります。
各再建方法の違いについて以下に示します。
自家移植 | インプラント | ||
---|---|---|---|
DIEP(遊離腹部皮弁法) | LD(広背筋皮弁法) | ||
形の自由度 | あり | そこそこあり | あまりなし |
手触り | 自然、温かい | 自然、温かい | やや硬い、やや冷たい |
耐用年数 | 長い | 萎縮することあり | 長期的には入れ替えが必要 |
手術の回数 | 1回 | 1回 | 2回 |
乳房以外の傷 | あり | あり | なし |
手術時間 | 長い | やや長い | 短い |
体への負担 | 大きい | やや大きい | 小さい |
費用 | 健康保険の適応 | 健康保険の適応 | 健康保険の適応 |
合併症 | 血流障害、皮弁壊死 | 血流障害、漿液腫 | 感染、露出、リンパ腫 |
入院期間 | 10日程度 | 14日程度 | 7日程度 |
積極的適応 | 大きな下垂のある乳房 | - | 両側乳癌 |
適応外 | 妊娠希望のある方 | - | - |