Original Update by Dr.Farouk
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定時 | 緊急 | Total | |
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虚血性心疾患 | 2 / 229(0.9%) | 3 / 64(4.7%) | 5 / 293(1.7%) |
弁膜症 | 2 / 384(0.5%) | 7 / 40(18%) | 9 / 424(2.1%) |
胸部大動脈 | 2 / 199(1%) | 12 / 152(7.9%) | 14 / 351(4%) |
破裂性 | - | 1 / 16(6.3%) | |
急性A型解離 | - | 11 / 130(8.5%) | |
先天性、他 | 0 / 67(0%) | - | 0 / 67(0%) |
Total | 6 / 878(0.7%) | 22 / 256(8.6%) | 28 / 1135(2.5%) |
年々増加している症例の手術症例に対して質の高い医療の提供をめざしています。2018年4月ハイブリッド手術室が造設され、心臓病センターの最新治療が本格始動しました。2019年より高度な低侵襲治療(TAVI)が可能となり、2022年で3年が経過し非常に良好な成績を維持しています。(TAVI 手術死亡0%, 開心術(待機症例)手術死亡 0.7%(6/878))
2022年は新型コロナの影響で心臓血管手術症例数がわずかに減少しましたが、手術成績は変わることなく良好な治療成績(待機的開心術 手術死亡 0%(0/129))でした。また適切な手術時期・手術適応を含め、患者さまに合わせた低侵襲手術(MICS手術)を積極的に取り入れています。
低侵襲治療
1.冠動脈バイパス術では、人工心肺装置を使用せず心臓が動いたまま行うオフポンプCABGという高度な技術を用いた方法で人体への侵襲は少なくて済み、患者さんの負担を少なくする努力をしています。
2.弁膜症手術では、小開胸・低侵襲心臓手術(MICS)を2015年より開始しています。手術の負担を軽減するために、特に小さな創で手術を行うMICSも患者さんの要望や適応があれば積極的に行っております。
3.大動脈手術においては、2008年より胸部および腹部ステントグラフト内挿術を開始し、2022年現在では多くの症例に対して手術を行い、高齢の患者さまでも元気に退院できるような低侵襲の安全な治療を行っています。
佐賀大学
1998年
心臓血管外科一般
日本外科学会外科専門医
三学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医・修練指導者
日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医
日本胸部外科学会評議員
日本不整脈学会「植込み型除細動器/ペーシングによる心不全治療」認定医
医学博士
杏林大学
2007年
心臓血管外科一般
日本外科学会外科専門医
三学会構成心臓血管外科専門医認定機構 心臓血管外科専門医・修練指導者
日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医
腹部ステントグラフト指導医
胸部ステンドグラフト指導医
TAVI指導医
医学博士
自治医科大学
2010年
心臓血管外科一般
日本外科学会外科専門医
旭川医科大学
2017年
心臓血管外科一般
医師 |
鳥飼 哲世(とりかい てっせい) |
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心臓は全身に血液を送るためのポンプとして働きます。心臓の筋肉はひと時も休まず働いており、1分間に60~90回、全身に血液を送り出しています。この心臓のポンプ機能により血液が全身に回っているので血圧が生じているのです。心臓の筋肉も動くためには栄養や酸素が必要です。心臓の表面には冠状動脈という血管が右1本、左2本走っており、心臓の筋肉に栄養や酸素を送っています。しかし高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、慢性腎不全などがある状態で年齢を重ねると動脈硬化が進みます。動脈硬化とは上記理由などにより血管に炎症が引き起こされ、血管が硬くなり、肥厚し、さらに狭くなってしまう状態です。冠状動脈が狭くなったり、閉塞すると心臓の筋肉に十分な栄養や酸素が届かなくなります。狭くなった状態が狭心症、閉塞した場合を心筋梗塞と言います。
心臓の筋肉に酸素や栄養が不足すると、心臓の筋肉が酸素不足となり、胸痛や呼吸苦などを認めるようになります。また心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が行かないと、心臓の筋肉は動かなくなり、さらにまったく栄養や酸素は行かなくなると心臓の筋肉は壊死してしまいます。このような状態が続くと、体内の血液の循環が悪くなり、いわゆる心不全になります。心不全になると肝臓や腎臓に負担がかかり腎不全や肝不全を起こすこともあります。また、肺での循環も悪くなり肺に水が溜まってしまいます(肺水腫)。
心臓の動きをよくするためには心臓の筋肉への血流(栄養、酸素)を改善させる必要があります。狭心症や心筋梗塞の患者様は血液をサラサラにするお薬や、心臓の筋肉を保護するようなお薬を土台とし、カテーテル治療や冠動脈バイパス手術が必要になります。
冠状動脈の狭窄病変が少ない場合には薬やカテーテルによる治療(PCI)を優先して行います。しかし、冠状動脈の主幹部および複数の冠動脈に狭窄・閉塞が認められた場合やカテーテル治療が困難な場合には冠動脈にバイパス(迂回路)を作る手術治療が勧められます。カテーテル治療とは手首や股の動脈よりSheathという太い点滴様の管をいれ、ここから折りたたまれた風船を挿入し、冠状動脈まで持っていきます。狭くなった所まで風船を進め、そこで風船を膨らませます。狭くなった部分を直接風船で膨らませるのです。必要な場合ステントといった筒状の金網を狭窄部位に留置することにより血管の内腔を確保します。
冠動脈バイパス手術は狭くなっている所には直接手を付けず、病変部位より末梢の冠状動脈に血流の良い新たな血管をつなぐことによって、血流の迂回路を作成し、心臓の筋肉への血流を増やそうという手術です。もともとの冠状動脈からの血流は狭窄部位を勢いよく通り越せませんが、新たな迂回路からの血流により、狭くなった先に十分な血流が得られるようになるのです。迂回路として使用される新たな血管としては、胸骨(胸の中央にある扁平上の骨)の裏側に走っている内胸動脈、胃の淵に沿って走る胃大網動脈、足の表在にある大伏在静脈などがあります。これらの血管はなくなっても体に影響を及ぼすことはありません。
当科の冠動脈バイパス手術は、両側内胸動脈グラフトを使用した術式が標準術式であり、現在80%近い症例に使用しており、糖尿病の方やご高齢の方にもその適応を広げています。
冠動脈バイパス手術によって多くの患者さんは、運動時の呼吸困難や胸痛などの症状が軽減するばかりでなく、将来的に心筋梗塞を起こす危険も軽減することが期待されます。心臓の手術は心臓を一時的に止める事が必要な事が多く、その際には心臓と肺の代わりとなる人工心肺といった装置が必要になります。しかし当科では原則として、人工心肺を使用しないで冠状動脈の血管吻合操作を行う、心拍動下バイパス術(Off Pump CABG)を行っています。つまり心臓を止めずに血管をつなげ迂回路を作りますので、心臓を止めることや人工心肺を使うことによる体への負担が軽減されることが期待されます。
カテーテル治療は循環器内科、冠動脈バイパス手術は心臓血管外科が担当します。当院では日本循環器病学会が定めるガイドラインに基づいた治療を行っております。例え冠状動脈に狭窄があったとしても有意な狭窄ではない場合は内服治療にて経過を見ることもあります。ガイドライン上治療選択が難しい場合は、毎週行われる循環器科と心臓血管外科でのカンファレンスで議論し、患者様1人1人にあった適切な治療を提供させて頂いております。
当科における冠動脈バイパス手術の治療実績を下記に示します。現在、横浜市立みなと赤十字病院では年間40-50件の単独冠動脈バイパス手術、および弁膜症や大血管手術と同時に行う複合冠動脈バイパス手術を実施しております。
近年の高齢化社会の影響によって、冠動脈バイパス手術を受ける患者様の年齢も上昇しています。また、併存疾患が多くなっている傾向も見られます。今後も当院循環器内科、および近隣の循環器科病院の先生方と連携して、安全で予後改善につながる質の高い外科的な冠動脈血行再建手術の実践を目指し、地域の皆様方の健康水準の向上に寄与していきたいと考えております。
横浜市立みなと赤十字病院は、近隣地域のみならず遠方からの受け入れも積極的に対応しております。かかりつけの先生より紹介状をいただき、心臓血管外科を受診いただければと思います。
全身へ血液を送るポンプとして働く心臓には大きく分けて4つの部屋があり、血液の逆流を防止するために各々の部屋の出口に弁があります。このうち、全身から酸素が少ない血液(静脈血)が心臓に戻ってくる部屋を右房(右心房)と呼び、右室(右心室)に連続します。右室から肺動脈を介して、肺に血液は流れます。肺で酸素を渡された血液が戻ってくる部屋を左房(左心房)といい、全身に血液を送るポンプの役割をしている部屋を左室(左心室)と呼んでいます。その中で左室と大動脈の間にある弁を大動脈弁、左心房と左心室の間にある弁を僧帽弁と呼び、右房と右室の間にある弁を三尖弁と呼びます。これら弁の働きにより、心臓の内部では規則正しい一方向性の血液の流れが維持されています。
心臓弁膜疾患とは、通常とは逆に血液が流れたり(閉鎖不全症:逆流症)、血液がスムーズに通過できなくなったりする状態(狭窄症)の総称です。これら、心臓弁の閉鎖不全症や狭窄症は進行すると、全身に血液を送るポンプとしての心臓の機能が非効率化するだけでなく、心臓自体にも大きな負担がかかることになります。各疾患によって異なりますが、労作時の息切れは、進行した心臓弁膜疾患に共通した症状です。
当科は、日本循環器科病学会の定めるガイドライン(弁膜疾患の非薬物治療に関するガイドライン2012年改訂版)を元に、各患者様の状態に照らし合わせて一番良いと思われる手術術式を選択し実施しています。以下に代表的な心臓弁膜疾患の病態とその治療法について解説します。
弁の変性、弁輪拡大、感染、先天性二尖弁などの原因で弁が上手く閉じなくなり逆流が生じてしまう病態が大動脈弁閉鎖不全症です。本来ならば心臓から全身へ送り出されるべき血液が左心室内へ逆流するため、心臓には過大な負荷がかかります。初期の段階では、心雑音はあっても無症状で経過するということが少なくありません。しかし、負担が重なると徐々に心機能は低下し元に戻らなくなっていきます。逆流の程度がひどくない場合や心不全症状が軽度の場合は、利尿剤や降圧剤などで心臓の負担を軽減することも可能ですが根本的な治療ではありません.心不全症状がある、無症状もしくは症状が軽度であっても心臓エコー検査で心機能低下(左室駆出率50%以下)や心拡大の進行(左室収縮末期径55㎜以上または、左室拡張末期径75㎜以上)などが確認された場合は、患者さん各々のリスクを考慮したうえで手術の適応を判断します。自分の大動脈弁を切除して人工弁に置き換える手術や、自己大動脈弁を温存し閉鎖不全を改善させる形成術を行います。
動脈硬化、変性、先天性二尖弁などさまざまな原因でこの弁が硬くなって動きが悪くなり、血液の出口が狭くなってしまう病態が大動脈弁狭窄症です。出口が狭くなると血液を送り出すために心臓には過大な負荷がかかりますが、初期の段階では無症状で経過することが少なくありません。しかし、負担が重なると徐々に心機能は低下し、狭心痛(心筋への血流が不足し胸の痛みが出る)、失神発作(突然意識がなくなる)、心不全(息切れ、むくみ、易疲労感など)などの症状が出始めてからの予後は急激に悪化すると言われています。また、突然死の危険性もあります。狭窄の程度が高度でなければ内科的に利尿剤や降圧剤などで心臓の負担を軽減することも可能ですが、根本的な治療ではありません。症状がある場合、心臓エコーで狭窄の進行が確認された場合には、患者さん各々のリスクを考慮したうえで手術の適応を判断します。狭窄した大動脈弁を切除して人工弁に置き換える手術を行います。また、今まで心臓手術に耐えることが難しいと判断された方にも、実現可能な新しい治療法が、近年、我が国でも行えるようになってきました。この体に負担の少ない治療法は、経カテーテル大動脈弁留置術:TAVI(Transcatheter Aortic Valve Implantation)と呼ばれており、当院でも実施しています。
心臓が拡張するときに僧帽弁が開いて、左心房から左心室に血液が流入します。心臓が収縮して左心室の血液が全身に送り出される時にはこの弁は閉じて、左心房へ血液が逆流しないようにしています。種々の原因で弁が閉じずに合わさりが悪いと、心臓が収縮するたびに大量の血液が左心室から左心房に逆流するようになります。血液の逆流によって、左心房の圧は上昇し、心臓に負担がかかり、肺に血液が停滞して心不全の原因となります。また、心房細動(不整脈の一種。心房が不規則に収縮する状態)も発生しやすい状態になります。僧帽弁閉鎖不全症の外科的治療は、心臓の機能と心不全症状を改善させることが目的となります。僧帽弁手術の方法には大きく分けて、次の2つがあります。
(1) 弁形成術 :自己弁を温存して行う手術です。逆流の原因となっている部分を切除し縫い合わせる、あるいは拡大した弁輪を縮小して僧帽弁がきちんと閉じるようにする手術です。
(2) 弁置換術:僧帽弁を切り取って、代わりに人工弁を縫いつける手術です。 当科では、僧帽弁閉鎖不全症の90%以上の患者様に僧帽弁形成手術を実施しており、本疾患における標準術式としています。さらに近年では、従来の胸骨正中切開による僧帽弁手術に加え、右小開胸僧帽弁手術(MICS)を適応のある患者さんには積極的に行い、手術による体への負担を減少させ、入院期間を短縮化させています。
左心房と左心室の境界にある僧帽弁が狭窄し、左心房から左心室に血液が流れにくい状態です。原因の多くは小児期に罹患したリウマチ熱とされています。弁が硬くなり動きも悪くなるため、血液の通りが悪くなって、心臓に負担がかかった状態が持続します。リウマチ熱に罹患してから、徐々に弁の変化が始まり、症状が出現するまでに20~40年かかるといわれています。
心臓に負担がかかった状態が持続すると、左心房が拡大し、息切れ、胸苦しさなどの心不全症状が出現します。また右心系にも負荷がかかり、三尖弁(右房と右室の間の弁)に逆流を認めることがあります。また心房細動(不整脈の一種。心房が不規則に収縮する状態)、動脈塞栓症(左房内の血流がよどむことで、血栓ができ、脳梗塞などの原因になる)といった合併症が発生しやすくなります。内科的には心不全に対する治療(利尿剤)、心房細動に対する治療(抗不整脈薬、抗凝固薬)がありますが、根本的な治療ではありません。僧帽弁の狭窄を解除するためにはカテーテル治療による交連切開術が行われておりますが、適応が限られており、高度な僧帽弁狭窄症の場合には、手術による人工弁置換が必要とされます。
心臓弁膜症手術で使用する人工弁には、生体弁と機械弁という二種類の弁があり、それぞれ長所と短所があります。
機械弁 | 生体弁 | |
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長所 | 耐久性が優れている。 | 原則、ワーファリン内服を中止できる(不整脈が無い場合)。 |
短所 | 一生、ワーファリンの内服が必要。血栓症、出血、催奇形性のリスクあり。 | 劣化し、再手術が必要となることがある。 |
どちらの弁を使用するのがよいか?という点は、年齢・併存する他のご病気・術後希望されるライフスタイルなどによって異なります。近年、生体弁の使用頻度が上昇していますが、患者様それぞれのご希望に沿った弁の選択を当科では行っています。
血液は人工弁と接触することで、血栓(血の塊)を形成しやすくなります.人工弁に血栓ができると弁が正常に作動しなくなります。また、弁からはがれて流れ出した血栓は、脳梗塞などの塞栓症を引き起こします。特に、機械弁では、これら血栓塞栓症の予防が非常に重要です。機械弁での弁置換術後は生涯、血液を固まりにくくする薬(ワーファリンなど)を服用する必要があります。ワーファリンを継続的に内服することによって、年間1~2%の割合で出血または塞栓症の危険性が生じると報告されています。
心臓の動きは、心房の収縮の後に心室が収縮することを繰り返しています。心房細動とは不整脈の一種で、この状態では心房の電気的興奮が無秩序となり、心房が有効な収縮をすることができなくなっています。一時的なものから永続的なものまであります。この不整脈の問題点は、2つあります。一つは心房に血液がよどむことで血栓ができ、脳梗塞などの塞栓症の原因となることで、もう一つは心機能が低下してくることです。Maze手術とは無秩序な電気的興奮を断絶させ、心房の収縮を改善させる手術術式です。単独で外科的治療を行うことはなく、通常心臓弁膜症手術と同時に施行します。この手術によって心房細動から正常な状態(洞調律)に復帰する確率は約70%とされています。また、年齢、心房細動の期間、心機能の程度などにより、Maze手術の治療成績は影響を受けるとされています。当科は、高周波エネルギーを使用した焼灼法によるMaze手術を、標準的に実施しています。
高周波エネルギーによる焼灼法で使用する医療機器 (日本メドトロニック社より提供)
当科における心臓弁膜症手術の治療実績は診療実績の部分に示しています。2022年、横浜市立みなと赤十字病院では、心臓弁膜症手術を年間80件程度実施しています。僧帽弁閉鎖不全症に対する右小開胸僧帽弁形成手術(MICS-MVP)、大動脈弁疾患に対する右小開胸大動脈弁置換術(MICS-AVR)は、2016年から開始し2022年までに安定した成績で年々増加しています。またリスクの高い高齢者には、症例に対応して経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)を2019年から開始し良好な成績を維持しています。
また大動脈弁と僧帽弁双方に対する連合弁膜症手術や、虚血性心疾患や胸部大動脈疾患に合併する複合手術も数多く実施しております。より安全で低侵襲な心臓弁膜症手術の実践を目指し、今後も治療内容を充実・発展させていきたいと考えております。また、感染性心内膜炎などの緊急な治療を要する心臓弁膜症疾患に対しても、引き続き、迅速に対応して参ります。
心臓弁膜症の各種疾患は、急速に進行するものもありますが、ゆっくりと進行し、人間ドックや検診での心雑音聴取により発見されることも珍しくありません。症状がなく、心臓超音波検査を中心とする各種検査で、心臓に対する負担がそれほど強くないと判断された場合には、内服治療で経過観察することになります。その場合には、今後増悪する可能性も踏まえ、定期的な経過観察することが重要となります。
当センターでは、手術のみならず、心臓弁膜症の病状評価も、当院循環器科および地域の循環器科診療の携わる先生方と連携して行っておりますので、心臓弁膜症の可能性があると診断された方は、お気軽に外来を受診してください。
心臓の機能が低下してしまい、身体に十分な血液を供給できない状態を心不全といいます。内科的な治療が基本となりますが、その原因よっては、手術療法が適応となる場合があります。その中でも、機能が著しく低下してしまった状態を重症心不全といいます。明らかな誘因がない拡張型心筋症や、風邪などを契機に発症する劇症型心筋炎、また広範囲な心筋梗塞による虚血性心筋症などが原因となり、急激なものから緩徐に進行するものまで様々な経過があります。重症心不全に陥ってしまった場合で、適切な心不全治療を行っても回復がえられない場合は機械的に心臓をサポートする装置が必要があり、これを補助循環装置といいます。さらには、心臓の機能が不可逆的に障害され、他の臓器の機能が保たれている場合、心臓移植が必要な場合もあります。重症心不全治療は複数の治療方法を合わせて治療するのが一般的ですが、その中でも重症心不全に使用する治療方法を解説します。
バルーンを大動脈の中で拡張、収縮させることで心臓の働きを助ける装置です。主に股の付け根の動脈から大動脈まで約50cmのバルーンを挿入し、心臓のタイミングに合わせてバルーンを膨らませたり縮ませたりすることで、心臓が血液を拍出しやすくなり、また心臓自体を栄養する血流を増加させ、さらに他の臓器の灌流圧を保つことができます。 バルーンの位置が重要であり、安静臥床を余儀なくされ、使用は短期間に限られます。
簡易な人工心肺装置であり、心臓と肺の機能を同時に補助することができる装置です。主に、股の付け根から静脈を通して心臓の近くまで管を挿入し、そこから血液を一旦体外へ導き出し、体外のポンプで心臓を補助し、人工肺を用いて血液に酸素を供給し、二酸化炭素を排出させて、動脈を介して体内に血液を戻します。血液の酸素化と体内の血流を補助します。血液が生理的でない流れをすることや、回路内に血栓を形成するなどの問題から長期間の使用は難しいです。
大動脈は体の中で最も太い血管です。心臓から上向きに出た後、弓状に左後方へ大きく曲がり、腹部方向に下っています。心臓から横隔膜までを胸部大動脈、横隔膜から下の部分を腹部大動脈といいます。
腹部大動脈の直径は正常では約2cmですが、正常の1.5倍である3cmを超えると、腹部大動脈瘤と呼ばれます。腹部大動脈瘤とは、血管壁がもろくなり大動脈にできた"コブ(瘤)"のことで、動脈硬化や高血圧が原因で発症します。特に喫煙との強い関連性が報告されています。時間経過とともに徐々に大きくなり、最終的には破裂し、死に至ります。破裂するまで無症状のことが多いのでサイレントキラーと呼ばれることもあります。一旦破裂すると、救命することは難しく、現在の医療でも、破裂症例の死亡率は90%近くにも上るといわれています。ですので、腹部大動脈瘤が、もし何らかの形で発見されたのであれば、破裂前に治療を行うことが大切です。瘤の直径が4~5cm以上になると破裂のリスクが高くなり、治療対象となります。また、動脈壁の一部が突出して拡張するタイプの嚢状瘤や、感染を起こしている感染性大動脈瘤などではサイズが小さくても破裂しやすいため、手術治療が推奨されています。
(「イラストレイテッド大動脈瘤手術」安達秀雄著書より)
動脈瘤自体を小さくする薬はありませんが、動脈瘤のサイズが小さい時には、破裂・拡大予防として血圧を下げる薬が使用され、定期的な経過観察を行います。また、喫煙は大動脈瘤の拡大を進行させる大きな要因の一つであり、禁煙が非常に重要です。経過観察中に、破裂のリスクが高まる大きさになると、人工血管置換術あるいはステントグラフト内挿術(EVAR)を行うことが唯一の治療法となります。
腹部大動脈瘤の治療については、大きく分けて二つの方法があります。一つはおなかを開けて大動脈瘤を直接切開し、人工血管で置換し、縫合糸で縫合する人工血管置換術です。二つ目はカテーテルを挿入してステントグラフトを大動脈瘤内に装着するステントグラフト内挿術(EVAR: endovascular aortic repair)です。それぞれ、長所と短所があります。
通常の開腹手術による人工血管置換術では15~20cm程度の腹部正中切開を行います。腹部大動脈の血流を一時的に止め(遮断といいます)、動脈瘤に代わり、人工血管を大動脈の健康な部位に縫い付けて埋め込む手術です。この治療法によって動脈瘤の破裂を未然に防ぐことができます。手術による患者様への負担がステントグラフト内挿術と比較して大きいため、高齢の患者様、全身状態に問題のある方、多数の開腹歴のある方には合併症の危険率が高くなるという問題もあります。しかし現在のところもっとも確実な治療とされる方法であり、近年の米国の大規模多施設研究でも、開腹手術の方が遠隔期の血管関連イベントが少ないという報告がなされています。開腹手術のもう1つの欠点は、開腹操作によるもので、 大動脈イベントが少ない一方、ヘルニアや腸閉塞などの合併症を遠隔期に起こしやすいことも知られています。
比較的新しい方法です。ステントグラフトとは、人工血管にステントと言われるバネ状の金属を取り付けた新型の人工血管です。これを圧縮して7-8mmの太さの棒(シースといいます)の中に収納します。両方の足の付け根に4~5cmの小切開を行い、動脈内にカテーテルを挿入し、腹部大動脈瘤の部位まで運んで収納してあったステントグラフトを放出します。放出されたステントグラフトは、金属バネの力と患者様自身の血圧によって広がって血管内壁に張り付けられるので、開腹手術のように直接縫い付けなくても自然に固定されます。大動脈瘤は切除されず残っているわけですが、ステントグラフトにより動脈の壁が2重に補強されることにより、かつ大動脈瘤が蓋をされることになり、瘤内部の血流が減少し、かさぶたのようになります(血栓化といいます)。血流による瘤の拡大を防止できれば破裂の危険性はなくなります。このように、ステントグラフトによる治療では腹部を切開する必要がなく、切開部を極めて小さくすることができ、患者様の体にかかる負担は少なくなります。
EVARは国内10学会から構成される「日本ステントグラフト実施基準管理委員会」(http://stentgraft.jp/、一般の方向けのサイトもございますのでぜひご覧ください)によって認定された施設・医師のみが行うことのできる手術です。当院では2008年に腹部大動脈瘤ステントグラフト実施施設に認定され、EVARを開始し、現在まで当院の手術死亡率は1%以下であり比較的安全に行える治療法です。
ステントグラフト内挿術は確立した治療法ということができますが、すべての患者様に安全に実施できるわけではありません。ステントグラフト内挿に伴う解剖学的要件(瘤の部位、形態、動脈壁の性状など)が細かく決められていますので、術前CTを詳細に検討し、さらには全身状態等も十分に考慮してEVARまたは開腹手術の適応を決めることになります。また、EVARは比較的新しい治療法ですので、長期成績が不明瞭なところもあり、近年の米国の多施設大規模研究では、追加治療などの血管関連イベントの発生率が高いという報告がなされました。
特に大きな病気をもっていない若い患者様にとっては開腹手術の方が確実で安全な治療法となることもあります。当科は、なるべく患者様の希望に沿った治療法を心がけていますので、外来で是非一度ご相談ください。
当科における腹部大動脈疾患手術の治療実績を下記に示します。現在、横浜市立みなと赤十字病院では、主に腹部大動脈瘤を対象疾患として、手術治療(開腹手術+ステントグラフト内挿術)を行なっています。待機的手術に関していえば、開腹手術の在院死亡率は1.5%程度、ステントグラフト内挿術の在院死亡率は1%以下と良好な治療成績が得られています。
腹部大動脈瘤破裂に対する緊急手術も、年間10件程度実施しております。
動脈瘤は破裂してしまうと、何とか病院にたどり着くことができても出血多量により、術前の状態が悪いため、在院死亡率は15%と通常よりかなり高い死亡率になります。私どもは、今後も、近隣の循環器科・救急診療に携わる先生方と連携して、横浜在住の皆様方の健康な生活の維持に貢献していきたいと考えております。
尚、横浜市立みなと赤十字病院では、手術治療のみならず、腹部大動脈瘤の病状診断と定期的なCT検査による経過観察も実施しています。近隣地域のみならず、遠方からの受け入れも積極的に対応しております。検診などで、腹部大動脈瘤の可能性があると診断された方は、かかりつけの先生より紹介状をいただき、お気軽に当科外来を受診してください。
閉塞性動脈硬化症とは、動脈硬化などの原因により、動脈の内腔が狭くなり循環障害をきたした状態です。その発生には、喫煙が強く関与しています。動脈硬化が原因の場合には、下肢だけでなく脳・頸動脈・心臓周囲の動脈(冠動脈)などにも生じ、それらの臓器の循環障害も併せて生じることも多いことから、「全身の動脈硬化の一部分症」と考える必要があります。 循環障害のため、下肢の血圧が上肢の血圧に比べて低下しています。上腕と足での血圧比(ABI=足での血圧測定値/上腕での血圧測定値)で、下肢の循環障害の有無をまず判断します。1.0が正常、0.9未満が異常で、重症例では0.5以下のことが多いとされています。 この疾患は慢性的な経過をとることが多いため、下記の臨床症状分類が病気の進行度をみる指標の1つになります。治療が必要になるのは、Ⅱ度以上と言われており、軽度の間歇性跛行のみの場合、薬物治療で経過観察することが多く、中等度以上の場合、血行再建療法(手術、血管内治療)が必要になります。また、Ⅲ度、Ⅳ度は「重症虚血肢」と呼ばれ、放置すると切断を余儀なくされる状態であり、なるべく早い段階での血行再建術が必要となります。
Ⅰ度 | 無症状(冷感,しびれ) | |
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Ⅱ度 | 間歇性跛行(歩行中に下肢痛が出現し休憩を要する) | |
Ⅲ度 | 安静時疼痛 | 重症虚血肢 |
Ⅳ度 | 壊疽,下肢の潰瘍形成 |
(1)薬物療法
血管拡張薬や抗血小板剤、抗凝固剤といった製剤が使用され、早期の場合には、薬物療法のみでも症状の改善が期待されます。中等度以上の間歇性跛行を呈する場合には、薬物療法のみでは不十分であり、病気の進行を遅らすことしかできません。なお、喫煙は動脈硬化を進行させる大きな要因のひとつであり、禁煙は非常に重要です。
(2)血行再建療法
閉塞性動脈硬化症では、図のように動脈の様々な部位が狭窄・閉塞します。病変の部位や長さ、性状などに応じて、血管内治療やバイパス手術で最も適切な治療を選択します。>
①血管内治療(経皮的血管形成術、インターベンション)
血管内治療は、先端に小さく折りたたまれたバルーンを装着したカテーテルを用いて、狭窄または閉塞してしまった血管を拡張させることにより、血液の流れを確保、再開させる手技です。通常、バルーンを膨らませ血管を拡張することで血流が確保されます。この治療ではバルーンカテーテルに加えてステント(金属製のチューブ)を留置することもあります。
血管内治療は、メスを使わずに治す治療法であり、術後の痛みや体に対する侵襲も少ないという利点がありますが、適応は動脈の狭窄部位やその長さより制限されます。一般に病変部が腸骨動脈、大腿動脈領域で、狭窄部位が短い場合には、血管内治療の適応となることが多いのですが、病変部が長く連続している場合や、多発している場合には、血管内治療が難しいこともあります。
②血行再建手術(バイパス手術)
狭窄・閉塞部位を迂回するように新たな血液の通り道(バイパス)を作る手術です。バイパスする部位に応じて人工血管や自己の血管(大伏在静脈など)を使用します。鼠径部より中枢の腸骨動脈領域や、大腿動脈領域から下腿・足部の病変まで幅広く対応することが可能です。
重症虚血肢では、傷を治癒させ切断を回避するためには、血行再建が必須です。血管内治療は低侵襲かつ繰り返し行えるという利点がある一方、バイパス手術は長期開存が望めることと、広範囲の組織欠損(切断後の状態など)に対してはより効果があるという利点があります。当院では重症虚血肢の方に対して、手術が可能な全身状態であれば積極的にバイパス手術を選択しています。またバイパス手術後の創傷治療は近隣病院の形成外科と連携し治療を継続します。
その他にも当院では、下肢静脈瘤に対する治療や、透析用シャント手術にも対応しています。下記に末梢血管外科領域の対象疾患を表示します。
末梢血管外科領域 | 腹部大動脈疾患:腹部大動脈瘤・外傷性腹部大動脈損傷など 末梢動脈疾患:閉塞性動脈硬化症・バージャー病・末梢動脈瘤・腹部内臓動脈瘤・急性動脈閉塞など 静脈疾患:下肢静脈瘤 透析関連:新規ブラッドアクセス作成・アクセストラブル関連(閉塞、感染など) その他:下腿浮腫・リンパ浮腫など |
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手術術式に関しては、外科的血行再建術(バイパス手術)を中心に実施しており、大腿動脈‐膝窩動脈バイパス手術(膝関節上/膝関節下)のみならず、ふくらはぎの足関節に近い部位や、足関節以下の部分の細い動脈を標的として血行再建を行うDistal bypass手術も積極的に行っています。治療対象となる患者様の中には、前記重症度分類でIII度・IV度の重症虚血肢の方も多く含まれており、実際、多くの患者様が、外科的血行再建術により、下肢切断への進行の予防へ、切断範囲の縮小化といった効果が得られています。
今後も近隣の循環器科・透析科・形成外科の先生と連携して、神奈川県在住の皆様方の健康で快適な生活の維持に貢献していきたいと考えておりますので、セカンドオピニオンを含めて、当科外来受診を希望される方はご連絡ください。
動脈瘤(どうみゃくりゅう)とは、血液を全身に送る通り道である動脈が一部で異常に拡大した状態(いわゆるコブ)で、一般的には直径が正常の大きさの50%以上増加したときに瘤(りゅう)と呼ばれます。動脈瘤の中で心臓に直接つながる大動脈が拡大したものが大動脈瘤で、横隔膜より心臓に近い部分に発生するものを胸部大動脈瘤(上行大動脈瘤、弓部大動脈瘤、下行大動脈瘤)、横隔膜以下のものを腹部大動脈瘤と分類し、胸部から腹部の広範囲に広がる場合には胸腹部大動脈瘤と呼ばれます。一般的に、胸部であれば45mm以上、腹部であれば30mm以上を、大動脈瘤と診断します。また形状では紡錘状瘤と嚢状瘤(一方向性に突出)に分類され、破裂リスクが異なります。
原因は様々ですが、最も多いものは動脈硬化に伴うものといわれ、喫煙・高血圧・コレステロール異常等が発症に関与するといわれています。またいくつかの遺伝的疾患の関与(マルファン症候群等など)や、感染、炎症なども原因として指摘されています。
多くは無症状で経過し、検診等で偶然発見される状態です。時に大きくなった動脈瘤による圧迫症状(呼吸困難、声のかすれ、飲み込みにくいなど)が出ることもあります。
治療をしなければ、胸部大動脈瘤が徐々に大きくなり、最終的には破裂します。胸部大動脈瘤は成人突然死の代表的疾患であり、破裂した場合、大出血を起こし死に至ります。このため、一定の大きさ以上になった場合や急速に拡大する場合、手術による治療が勧められます。
胸部大動脈瘤が55mmを超える場合、または半年間に5mm以上の速さで拡大している場合、破裂の危険性が高いと判断され、手術治療の適応となります。一度大きくなった大動脈瘤が縮小することはありません。嚢状瘤やマルファン症候群などの遺伝的素因のある方の場合には、破裂の危険性が高いため、より小さいサイズでも手術治療が推奨されます。 開胸手術では瘤になった大動脈を直接切除した後、人工血管に取り換えます。胸部大動脈瘤の場合には、基本的には、人工心肺装置を使用して、自身の心臓を停止させ、場合によっては脳にも人工的に血流を流しながら手術を行います。心臓を停止して手術を行う場合には、手術中に脳や脊髄、腸管などの重要臓器のダメージを減らすことを目的に、体を冷却して手術を行うことが一般的です。後述するステントグラフトという治療法と比較すると体への負担が大きいという欠点もありますが、再発の少ない耐久性に優れた確実な方法という利点があります。
近年、血管内から治療を行うステントグラフトという治療法が広まってきています。これは、足の付け根の動脈からカテーテルという金属の細い管を使用し、それに沿って人工血管を動脈瘤の場所まで運ぶことで内側から動脈瘤を塞いでしまうという方法です。太ももの付け根の部分に数cmの小さな切開を入れるだけで治療ができることが多く、従来の開胸手術と比較して体の負担が少ないため、患者さんの年齢や全身状態、動脈瘤の場所や性状などによっては非常に有用な治療選択肢となります。
当センターでは、一般的な下行大動脈瘤へのステントグラフト治療だけでなく、やや合併症が多く適応の難しい弓部大動脈へのステントグラフト治療(開窓型ステント内挿術)も、現在積極的に実施しており、良好な治療成績が得られています。
また、後述する急性・慢性大動脈解離に対するステントグラフト治療も患者さんの数が増えています。これらの複数の治療の中から、病気の内容と患者様の術前状態(一般的な体力や余病の有無など)を照らし合わせて、総合的に判断して一番良いと思われる治療法を選択しています。ステントグラフト治療を希望される方はお気軽にお問い合わせください。
胸腹部大動脈瘤は、胸部から腹部にかけて広範囲に大動脈が拡大している状態です。胸腹部大動脈瘤に対する開胸手術は、大動脈瘤の範囲にもよりますが、6-12時間の手術時間が必要となります。体への侵襲は大きいですが、最も確実な治療です。手術には、左の背中からお臍の左側までの大きな創が必要です(下図)。人工心肺を使用し、心臓を停止させ、脳にも人工的に血流を送りながら、胸腹部大動脈を人工血管に置き換えます。脊髄の栄養動脈,腹部臓器,腎臓の動脈は再建する必要があります。当科では、本手術の最大の合併症である、脳梗塞と脊髄麻痺を予防するために、必要に応じて「超低体温下循環停止(DHCA)法」という方法を活用して、良い成績を治めています。
大動脈解離とは大動脈の壁に亀裂が入りこみ、血流が流れ込むことにより様々な病態を引き起こす、生命を脅かす可能性のある重篤な疾患です。高血圧症、動脈硬化、マルファン症候群などの遺伝性疾患などを背景に発症し、これまで経験したことのないくらい激しい胸部痛、背部痛が突然出現します。この他、15%程度は失神・意識消失で発症し、時に突然の腹痛や下肢の痛み・痺れなどでも発症します。50-60歳の男性に多く、放置すれば大動脈の破裂による出血、大動脈分岐血管の閉塞による臓器血流障害(心筋梗塞、脳梗塞、腹部臓器虚血、脊髄虚血、下肢の虚血)などを引き起こし高率に死に至ります。大動脈解離では亀裂の部位と広がりにより分類されますが、上行大動脈に解離が波及するStanford A型の場合には、手術治療なしでは発症から48時間以内に約半数の方が死亡するとも報告されています。症状のない安定したStanford B型の場合には、入院での血圧管理が主な治療方法となりますが、強い痛みが遷延する場合や、臓器灌流障害・急速な大動脈の形態変化を認める場合は、不安定型のStanford B型大動脈解離と診断され、外科的治療による介入が必要になる場合があります。
(メディカル・サイエンス・インターナショナル社Intensivist Vol.7 no. 4 木村直行著 より許可を得て転載)
緊急手術が必要な場合、手術方法は主に上行大動脈または上行弓部大動脈を人工血管に取り換えますが、場合によっては冠動脈バイパス手術や弁置換手術を追加することがあります。また、臓器灌流障害を強い場合や、下行大動脈に亀裂が存在するいわゆるDeBakey III型の逆行性解離の場合には、臓器灌流障害の改善や亀裂の閉鎖を目的として、ステントグラフト挿入術を同時に行うこともあります。内科的治療を選択した場合でも経過中に合併症の発生により手術を必要とする場合があります。
急性大動脈解離から救命できた場合でも、遠隔期に解離を起こした部分の大動脈が徐々に拡大し、解離性大動脈瘤となると、前述の大動脈瘤と同様に破裂を予防するための手術が必要になることもあります。このため、生存退院された患者様は、CTやMRIなどの画像検査を定期的に行い、残存する大動脈解離病変の評価を注意深く行うことは、破裂や再解離を予防するうえで極めて重要です。
現在、横浜市立みなと赤十字病院では、ステントグラフト手術を含めた胸部大動脈疾患に対する手術を年間60件程度・急性大動脈解離に対する手術を年間20件程度実施しております。2007年の導入後、低侵襲なステントグラフト手術件数は増加傾向で、今後もこの傾向は続くものと思われます。また、近年、胸部大動脈瘤破裂、急性大動脈解離、外傷性大動脈損傷などの緊急手術の頻度も増加しております。 今後も、循環器診療の基幹病院として、地域の循環器・救命救急診療に携わる先生方と連携して、地域の皆様方の健康な生活の維持に貢献していきたいと考えております。また、横浜市立みなと赤十字病院は、近隣地域のみならず遠方からの受け入れも積極的に対応しております。かかりつけの先生より診療情報提供書をいただき、心臓血管外科を受診いただければと思います。
診療科 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 備考 | ||
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心臓血管外科 | 午 後 |
新患・再診 |
伊藤 智 橋本 和憲 |
- |
伊藤 智 佐藤 哲也 |
- |
伊藤 智 三好 康介 |
- |
午後 | |
月 | |
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新患・再診 |
伊藤 智 橋本 和憲 |
火 | |
新患・再診 | - |
水 | |
新患・再診 |
伊藤 智 佐藤 哲也 |
木 | |
新患・再診 | - |
金 | |
新患・再診 |
伊藤 智 三好 康介 |
備考 | |
新患・再診 | - |
備 考
・受付時間 午前8時15分 ~ 午前11時00分
・診療開始時間 午前9時00分
・休診日
土曜日、日曜日
国民の祝日に関する法律に規定する休日
1月2日、1月3日及び12月29日から12月31日まで
・「再診」は、原則的に予約のみの診察です。
・予約のない方は、「新患・予約外」担当医が診察しますが、
診療科によっては当日受診できない場合もありますので
予めご了承ください。
*令和5年10月1日現在の情報であり、今後変更が生じます。
*外来担当医表に関するお問い合わせは当院医事課外来係までお願いいたします。
横浜市立みなと赤十字病院
住所:横浜市中区新山下3-12-1
代表電話番号:045-628-6100