カテゴリ【薬剤部紹介】の記事

切れ目のない医療~チーム医療と地域連携

2024/10/09

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 今回は、病院と地域医療との連携にかかわる薬剤師についてのお話です。
 
 当院は、救命救急センターを中心とした3次救急(命に関わる重篤な患者さんへの救急医療)と急性期医療を担っています。その一方で、地域がん診療連携拠点病院としてさまざまながんの治療にも取り組んでいます。
 
 ところで、もしあなたが、怪我をしたり体調が悪くなったら、先生(医師)に診てもらって治したいと思うのではないでしょうか?
 そのとき、どこの医療機関(クリニックや病院)に行きますか?
 昔だったら、直接病院に行っていたかもしれません。でも今は、各病院は、各地域の中でそれぞれ役割が振り分けられています。たとえば当院は、地域のクリニックの先生から紹介された患者さんを治療して地域にお返しするという役割の病院(急性期病院)でもあります。
 そもそも「なぜ病気を治したいと思うか」と考えると、「その人らしく日常を過ごせるように」というためではないでしょうか。
 病院で治療を受けるというと、「病院に入院し、治療して治って退院」のようなイメージをお持ちかもしれませんが、もし完全には治せない病気だったとしても時には「その病気とうまく付き合いながら生きていく」という選択も患者さんによっては取られる場合もあります。
どちらであってもその方にとって病院は通過点で、日常生活を送る場ではありません。患者さん一人一人が、それぞれの日常に戻るためには、その方が過ごす地域の医療者と病院が連携することが必要です。
そして、医療の担い手として医師、看護師とともに薬剤師も関わっています。
 
 では、病院の薬剤師と地域の保険薬局薬剤師が、患者さんがその人らしい日常生活が送れるようサポートしていくために、どのように連携をしているのでしょう?
 たとえば、入院患者さんの場合、退院後も継続して注射薬が必要な場合や入院中に医療用麻薬が開始された場合などでも家で過ごす事はできますが、設備や免許の上で対応できる薬局が限られる場合があります。
 その患者さんが退院した後も問題なく薬が使える様に、入院中から退院後の利用薬局を確認して連携しておく必要があります。
 退院後の患者さんの療養がうまくいくように、退院前に患者さん宅に退院後往診する医師や看護師、薬剤師等と合同で、患者さんやそのご家族も交えた退院前カンファレンスが開催されることがあり、薬剤師も参加して情報の提供や共有に努めています。
 
 また、外来患者さんの場合、当院では処方箋を発行して院外の薬局でお薬をもらう仕組みになっていますが、一部の治療薬や痛み止めの中には、薬局によっては取り扱っていないものもあり、治療のためにすぐ必要な薬がすぐには受け取れないということがないように、病院薬剤師が間に入って、保険薬局に在庫の確認をするなど患者さんをサポートすることもあります。
 
 もちろん、薬剤師がやることは薬があるかないかという物流のことだけではありません。
 地域包括医療のなかで、目の前の患者さんの治療がうまくいくように、患者さんにアドバイスをしたり、患者さんの状態を把握し、薬の効果や副作用を確認して、患者さん側にたって医師に相談や提案をしたりします。
 
 今年、日本緩和医療薬学会の地域緩和ケアネットワーク研修というプログラムで、地域医療を担う薬局の薬剤師さんが当院に研修に来られました。
地域で様々なクリニックの医師と協働し、奔走されていらっしゃるということで、研修最終日に当院薬剤部の部員会で、訪問薬剤管理指導の実際を一部紹介して頂きました。
 患者さんがどこにいても切れ目のない医療を提供する為に、病院薬剤師と地域の薬局薬剤師とが相互理解する良い機会となりました。(写真)
 医療の進歩、社会の変化、医療制度の改変などに従って、患者さんの選択肢が増えています。私たち薬剤師も、日々変化する医療を支える医療者の一員としてそれぞれの立ち位置で頑張っています。

入退院支援センターの薬剤師業務について

2024/06/07

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 今回は入退院支援センターの薬剤師業務についてご紹介いたします。
近年、少子高齢化が進んでおり、高齢化により、医療を必要とする患者さんの増加が予測されています。それにより、必要な人に医療が行き渡らなくなることや、病気のために自分らしく過ごすことが困難になる患者さんが増えることが懸念されており、そのため誰もが住み慣れた地域で必要なサービスを受けながら暮らし続けることができる仕組み作りが求められています。
 このような情勢も踏まえ、当院の入退院支援センターでは入院が決まった患者さんやそのご家族と面談を行い、スムーズな入院ができるように、また入院中や退院後の生活を見据えてどんな準備が必要か確認し、必要な支援の提供につなげる業務を行っています。
 入退院支援センターにはこれらの業務を行うために看護師や事務職員の他に薬剤師も常駐しており、また院内のスタッフだけでなく他施設の方とも連携しています。薬剤師はその中で主に、これから入院が決まった患者さんが主に常用している薬や入院前に中止する必要がある薬がないか、健康食品の摂取の有無、アレルギー歴、手術後に生じる嘔気嘔吐を起こす危険因子などについて確認しています。
 例えば、抗血栓薬のように出血が止まりにくくなる薬を服用している方は手術によっては事前に中止をしていただくことがありますが、適切に中止できていないと手術が行えず適切な治療の機会を逃すことや、手術に伴う合併症の増加、入院期間の延長につながります。
 入院期間が長くなれば経済的な損失が生じるだけでなく、体力が低下することなどによって退院後の生活に支障を来す場合もあります。中止が必要な薬剤は出血に関わる薬のみならず、ホルモン剤や糖尿病薬、骨粗しょう症治療薬、免疫を調節する薬の一部など多岐にわたるため、中止すべき薬を使用していないか、他院で処方されている薬を含めた常用薬を確認し、医師と連携して安全な治療が行えるように支援を行っています。
 また、医師より薬の中止指示が出たとしても、それだけで患者さんが指示通りに中止できるとは限りません。そのため、患者さんのお薬の管理状況や理解度に応じて、適切に入院に臨めるようかかりつけ薬局の薬剤師とも連携を行っています。
 今回は業務の一部をご紹介しましたが、治療上問題になりそうなことがあれば、かかりつけ薬局や病棟薬剤師、手術室担当の薬剤師等とも連携しながら、患者さんが安心して安全な治療を受けられるように努めています。

災害救護班について

2024/03/29

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 令和6年能登半島地震により尊い生命をなくされた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた皆さまが1日も早く穏やかな日常に戻られますことを心よりお祈り申し上げます。
 
 今回は 能登半島地震に対して当院から出動を行った 災害救護班についてご紹介いたします。
 
 日本赤十字社は、災害救助法で国・都道府県等と協力して救助にあたる機関と定められ、災害対策基本法では「指定公共機関」とされており、災害時に必要とされる医療救護活動を行うため、救護班を編成して常に対応できる体制を整えています。
 
 当院の救護班は医師1人、看護師3人、薬剤師1人、主事2人の計7人を基本構成とし、常時7個班を編成しています。
 
 救護班要員の薬剤師は毎年、定期的に行われる災害救護活動で求められる知識やスキルについての訓練、研修会に参加し、災害に対応できるようにしています。
 医療支援時の医薬品は、日本赤十字社医療救護班標準医薬品リストに基き、初期治療における外科系傷病から慢性疾患の内科系治療まで、限られた医療資材でも柔軟に対応できるように選定されています。
 医薬品を収納しているケースは頑丈なジュラルミンケースを使用し、各病院の採用薬品にていつでも利用可能であるよう準備をして出動時に救護車両に乗せて被災地へ持参しています。
 
 能登半島地震では、当院から1月4日~8日に救護第1班が、1月28日~2月1日に第2班が、2月18日~22日に第3班が出動し、主に避難所での巡回診療を行いました。救護班要員として薬剤師も出動し、調剤、常用薬の聴き取り、代替え薬の提案、服薬指導等の業務に従事しました。
 
 被災地での活動において薬剤師は、薬の専門家としての知識とスキルを発揮することができます。限りある資材の中で臨機応変、かつ柔軟な対応が求められますが、非常にやりがいのある活動だと感じています。

抗菌薬適正使用支援チームについて

2024/01/29

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 今回は抗菌薬適正使用支援チーム(AST: Antimicrobial stewardship team) についてお伝えします。ASTは薬剤師が中心に活動を行い、医師、検査技師、看護師で構成されています。
 薬剤耐性 (AMR : Antimicrobial resistance) という言葉をご存知でしょうか。今世界が直面している大きな問題として、細菌やウイルスに薬が効かない耐性の微生物による死亡者数が2050年にはがんによる死亡者数を超えると懸念されています。そのためAMR対策として、抗菌薬の適正使用を推進する動きが世界的にも広がっており、日本も例外ではありません。
 適正使用とは、必要なときに必要な量を必要な期間使用する、ということです。私たちの身近なところでいうと、一般的な ”風邪” はウイルスによることがほとんどであり、抗菌薬の処方は不要である場合が多いです。また処方された抗菌薬を、体調がよくなったからと自己判断で服用を中止したり、残った薬を他人へ譲ったりすることも適正使用とは言えません。
 外来処方への介入はもちろんですが、感染症で入院される患者さんも数多くいます。その感染症の原因菌を推測、確認しながら最も適切な治療が行われるよう支援する、それがASTの活動です。写真は、血液中から検出された細菌を検査技師が染色し、AST医師と一緒に顕微鏡で観察しているところです。細菌の色や形、大きさと、患者さんの病態や既往など様々な情報から菌の種類を想定し、投与されている抗菌薬で治療が適切に行われているかを考え、治療の変更が必要であれば主治医へ提案します。最終的には同定された菌がどの抗菌薬で治療できるかまでわかるため、患者さんごとに適した抗菌薬を主治医へ提案し感染症診療のサポートを行います。
 これ以外にも院内外で様々な感染症に関連した薬物療法について、積極的な情報提供活動に携わっています。

ICU/HCU紹介

2023/12/15

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4年目の薬剤師のIです。
 
今回は集中治療室(ICU)/高度治療室(HCU)病棟の薬剤師業務についてご紹介します。
当院では各病棟に病棟担当薬剤師を1名配置しています。ICU/HCUは当院の3階に位置しており、ICU病棟は10床、HCU病棟は8床あり、1名ずつ病棟担当薬剤師が配属され、病棟薬剤業務を行っています。
 
当院ICUにおいては定時大手術後の入室は約3割で、それ以外の大半は救急外来から、一部は一般病棟からの急変後の入室です。
すなわち緊急入室をベースとしたICUとなっており、重症度が高く、外傷から内因性疾患まで非常に多彩な疾患が入室するのが特徴です。そのため人工呼吸器や人工透析など機械のサポートを必要とする患者さんも多いです。薬剤師も様々な疾患に対する、治療方針や薬剤選択など、幅広い知識が求められます。
ICU/HCU病棟では毎日医師、看護師、栄養士、理学療法士の方々との多職種回診に薬剤師も参加しています。様々な職種の観点から情報共有を行い、回診で得られた手術後の痛みの状況や、夜間の睡眠の状況、排便状況などの情報を基にし、適切な薬物療法に貢献しています。
また、多職種回診後に医師、栄養士、薬剤師で治療方針などのカンファレンスも行っています。医師や看護師はもちろん栄養士や理学療法士などその他のコメディカルの方も距離が近く連携のしやすい環境です。
 
重症度の高い患者さんが多く医療用麻薬や毒薬などの使用頻度も多いです。薬剤師は使用方法、投与量が適正かどうか確認、病棟内で適切に管理されているかどうか確認しています。また、点滴で投与する薬剤も多く、投与できる点滴ルートも限られているため、薬剤同士の配合も問題ないかも確認しています。
また、様々な問題に対して新たな薬剤が追加になることが多く薬剤数は多くなってしまいます。薬剤を追加するのは比較的簡単ですが、薬剤の終了の時期は難しく、患者さんの状態を日々細かく見ながら現在の病態に応じて必要性の薄い薬剤の終了を医師と協議しています。
 
以上簡単ですが、ICU/HCU病棟の薬剤師業務の紹介でした。