トピックス
平成29年度 第1回成人ぜん息教室 開催報告
◆日時:平成29年6月7日(水) 15:00~16:00
◆場所:みなと赤十字病院 3階大会議室
◆開催目的:成人喘息の病態と治療について理解していただくことを目的とする
◆対象者:一般市民
◆参加者数:35名(当院:10名 他院:18名 その他・不明:7名)
◆講義内容:「成人の咳喘息~咳喘息といわれたら~」 総合アレルギー内科副部長 小松﨑 恵子医師
アンケート結果(回答者33名)
◆今回の教室は何で知りましたか?
①外来受診時のお知らせ 9名
②院内ポスター 1名
③横浜市広報 23名
④ホームページ 0名
◆今回の教室は役立ちましたか?(複数回答あり)
①いろいろ知ることができ、役に立った 28名
②前から知っていることだったが、確認になった 5名
③前から知っていることだったので、あまり必要な内容ではなかった 0名
※無回答 1名
◆今回の教室でどのような話が一番役立ちましたか?(複数回答可)
・咳ぜん息の概要について(4)
・咳ぜん息と気管支喘息の違い(5)
・ぜん息の検査について(3)
・ぜん息の薬について(6)
・ぜん息の症状について
・気管支ぜん息に移行させない方法について(3)
・通院と治療を継続する重要性について(3)
・咳ぜん息の診断について
・正しく吸入薬を使う重要性について(2)
◆今後も参加したいと思いますか?
①ぜひ参加したい 17名
②都合がつけば参加したい 8名
③内容による 8名
④参加しないと思う 0名
◆今後取り上げて欲しいテーマ、ご意見・ご要望・ご感想等
【テーマ】
・脊柱管狭窄症によるしびれや下肢痛について
・アトピー性皮膚炎とぜん息との関係について
・パニック障害について
・ぜん息と肺について
【ご意見・ご感想 等】
・参加者の質問への回答から、色々知ることができた。(3)
・喘息に痰がつきものであることを改めて認識した。痰の量が少なくなる時期があるが、これは症状が軽くなったことを表しているのか?
・気管支喘息が治らないということを知り、ショックだった。
・アトピー性皮膚炎からぜん息への移行はあるのか?
・高齢になり、肺活量が少なくなってきている。発作時や痰が出せなくなることが不安。
・呼吸器内科やアレルギー科で診てもらった方がよいことがわかった。
・かかりつけ医が咳ぜん息の病名を認めないので不安。
・参考になることばかりだった。(2)
・片頭痛と甲状腺で通院中。他の薬とステロイドの薬を一緒に服用してもよいのか気になった。
・かかりつけ医とのコミュニケーション方法について。(2)
・会場を主要駅のそばにして欲しい。
【質疑応答】
Q1 3週間超えないと吸入ステロイド治療の対象にならないのか?
A1 明らかに風邪の症状もない痰も絡まない熱も出ないような咳で、しかも去年も同じような咳があったかたは早い時期から吸入ステロイドか気管支拡張薬を試している。薬の効果があれば咳喘息だと判断する事もある。
Q2 症状の経過が短い患者に吸入ステロイドを処方してはいけないのか?
A2 喘息があり吸入ステロイドを使ったが、なかなか症状がよくならない方がいた。実は結核が隠れていたということがあったので医者は別の病気が隠れていることを念頭に置いて治療をしなければいけない。咳喘息の症状が典型的で感染症の可能性が低い場合は、早くから吸入ステロイドを使ったほうが効果はある。
Q3 30年前から喘息があり、咳が出るたびに苦しいのでパルミコート吸入を使用している。医者からは1日2回使用するように言われているが、2回ではとても足りないので必要な時に使っているのだが、そのような使い方はやめたほうがよいのか?
A3 薬は1日何回までと上限が決まっている。それを間で度々使っているということはベースが足りないことになる。頓用だけで症状が落ち着く喘息の方は軽めの方であるが、薬を上乗せしても症状が度々出る方は、薬の基が足りていないので基を増やしてもらった方がいい。症状があると薬を使わざるを得ない状態ではあるが、そこまで頓用を使うことは不安定な治療になる。頓用は使わずに日常生活を送れるように、薬のベースをあげる必要がある。治療の種類として、吸入ステロイドは残すことになるが、例えば薬剤のメーカーを変える、今使用している薬の量を増やす、さらに別の薬を併用する、きちんと吸えているか確認してもらうなど色々治療の作戦を立てることができる。定期の薬の量は医者が決めているので、主治医に度々薬を使わないといけない状況を伝えると薬の量を調整してくれる。
Q4 薬の基を増やすということは、非ステロイド系の薬ではなく他の薬を増やしたほうがいいのか?
A4 吸入ステロイド薬は基本である。その薬を上乗せしていたり奥まで吸えていない場合は、別のタイプの吸入薬に変えたり別の薬を加えて併用することもあるが、吸入ステロイドは止めない方がいい。
Q5 後鼻漏の可能性もあるが、痰の量が多く汚い痰が出ている。β2刺激薬が痰に効くと資料に書いてあるのだが効くのか?
A5 資料には痰に効くと書いてあるが、劇的に効くことはない。まずは鼻を治さないと足の引っ張り合いであり痰もなくならない。純粋に喘息の患者さんは色の濃い痰はあまり出ないので、汚い痰となると菌がいるなど別の病気の可能性があるので、主治医に伝えた方がよい。
Q6 痰がなかなかよく減らなかったり体重もすごく減ったりしているので、結核を併発したのではないかと思うが、そのような可能性はあるのか?
A6 若い頃に結核をした場合、その当時はベストな治療でも昔の治療は不十分なことが多くて菌が眠っている事がある。喘息治療をしていたら結核が出てくることがあるので主治医にその状態を伝えた方がよい。主治医が呼吸器系でなければ、呼吸器系の医師を紹介してもらったほうがよい。
Q7 先日、夜中に初めてヒューヒューゼーゼーすることがあった。この症状は間違いなく喘息ということでいいのだろうか?
A7 咳喘息は、喘息の一歩手前の状態と昔は患者に説明していたが、今は喘息の一部となる。残念ながら成人の喘息は自然に良くなることがかなり少なく多くても3割と言われている。症状が軽くなることはあっても子供と違って自然に治るというわけにはいかないのでうまく付き合っていく病気である。
Q8 本当の喘息になると治らないのですか?
A8 治らないというよりもいい状態にしておくことが大事である。今はいい薬がたくさん出ているのでこれ以上進ませないようにしておくことが可能である。薬を使わず病気も進まないという患者は少ない。
Q9 慢性のアレルギーがあって、昔はアレグラ、今はフェキソフェナジンを内服していたが、薬を切らすと全身に蕁麻疹が出る。そういうがあると喘息も治らないのですか?
A9 蕁麻疹は頻度の多い病気ですが、外から入ってくるアレルギーの基が原因で起こる蕁麻疹というのは案外少なくて7割ぐらいが原因不明だったりする。蕁麻疹が原因不明の方もいるので何とも言えない。蕁麻疹持ちの方や鼻炎持ちの方は咳喘息や喘息を合併しやすいことが分かっている。
Q10 普段から痰が出やすく、痰が絡んでもなかなか痰が出にくいのだが痰が出ると咳が止まることがある。主治医に勧められ耳鼻科を受診したところ、蓄膿症があると言われた。抗生剤の薬を飲んでも効果がなければ手術をした方がよいと言われている。痰が出るという状態はいろんな要素があるのですか?
A10 鼻汁が喉のほうに落ちると痰として感じる。咳は必要な咳があって、咳が全く出ないと奥の痰が出ない。咳をして痰が出るということは必要な咳なので止めすぎても困る。鼻がよくなると気道も良くなるので治療を続けてほしい。
Q11 喘息が治りかけていた頃に、タンスの中を掃除しようとして奥を開けたらカビだらけだった。カビの恐ろしさを知らなかったのでマスクをしないでカビ掃除をしたら、喘息が良くなると思った矢先にまた悪くなってしまった。カビは喘息を悪くさせてしまうのか?
A11 カビはアレルギー反応を持つものと持たないものがある。気道に刺激になって悪くなる方がいるので気をつけてもらいたい。
Q12 喘息があり、インフルエンザになった後に、咳が止まらない、夜中も横になれない、喘鳴もあり、たくさんの痰が出た。咳が出ると痰が絡むのは咳喘息ではなくて、喘息に移行しているということだろうか?
A12 ゼーゼーしたり呼吸が苦しかったりすることがあれば喘息の症状である。熱が出たということで一時的に気道が感染を起こして、そのために痰が増えてそこに喘息発作の刺激があると症状が出てしまう。気管支が縮んで、なお苦しくなる状態だと咳喘息を超えて本物の喘息である。
Q13 喘息は定期的な治療が必要なのか?
A13 症状が無くなってくれば、頓用の吸入薬だけですむということになるが、そこに辿り着く方は少ないので、弱い薬でもいいので定期的に治療を続けた方がいい。
Q14 ホームドクターは呼吸器専門ではないのだがやはり専門の医師にかかったほうがよういのか?
A14 開業医の中でも呼吸器内科出身の医師はたくさんいるので、そのような開業医に紹介してもらってもいいし、このような大きな病院に紹介してもらってもよい。しかし治療方針が決まったら、いつもの先生に戻って治療を継続してもらう方法がよい。
Q15 以前喘息の治療でフルタイドを使用した時に、パニック症状を誘発させてしまった。今の喘息薬はパニック症状を誘発するような治療が必要なのだろうか?
A15 ステロイドの内服の量を使うと精神状態が不安定になる方はいるが、吸入の量はマイクログラムといって微量であり基本的に吸入薬でパニック症状を誘発させるようなことは聞いたことがない。安心して使用してよい。
Q16 20年前から体が異常に冷える、冷たい風をあびると咳が止まらなくなる症状がある。これは咳喘息の中に入るのでしょうか?
A16 その時に風邪の症状がなくて、咳が主体で長引いていて胸のレントゲンも異常がないような場合は、咳喘息の可能性が高くなる。吸入ステロイドを使ってよくなったという結果論で診断することもあるし、可能であれば先ほど説明した踏み込んだ専門性のある検査ができると咳喘息の診断がはっきりできる。
Q17 この教室の中で説明のあった検査を受けたいと思った場合、ここの病院では紹介状が必要なのか?
A17 ここの病院は紹介状をお持ちの方が来ていただくシステムになっている。紹介状がない場合は、医学的な情報が少なくなってしまうので、今までどんな経緯でどんな治療をしていたかなどの情報がかかりつけ医よりあったほうがこちらも検査がしやすい。当日できる検査ではなく、1回受診して検査をしたほうがいいと判断した場合は予約をして検査を受けていただく方法になる。また紹介状がないと選定療養費用が5400円必要となってくる。
Q18 かかりつけ医に症状を伝えたところ、“アレルギーだね”と一言で終わらせてしまう。その先生にどこまで伝えたら紹介状を書いてあげるという流れになるのか?
A18 その先生は呼吸器内科出身ではないかもしれない。呼吸器内科出身の開業医であれば紹介状無しでも受診ができる。ここまでの詳しい検査はできないかもしれないが、呼気一酸化窒素濃度の検査であれば行っている施設はあるので呼吸器内科出身の先生に相談するとよい。
Q19 紹介状をもらったらどのようにすればよいか?
A19 電話で予約が取れるので連絡してください。その際に喘息教室に参加したことを伝えてほしい。
Q20 咳喘息にならないために日常生活の予防策はあるのか?
A20、体質が関係している病気なので、このような生活をしていれば絶対にならないことはまだ分かっていない。なってしまった場合は、喘息へ移行しないように吸入ステロイドが予防してくれる。元々アレルギー体質がある方は、ダニやほこりを吸わないようにご自身で環境を整えて、吸い込むものをできるだけ少なくしてもらうような生活を心がけてもらうことも予防となる。咳喘息の発症を日常生活で予防できることはまだ見つかっていない。